RIMOWA Heritage Ginza Special Exhibition
プレミアムラゲージで世界をリードするRIMOWA(リモワ)が、2018年12月にオープンした日本初のフラッグシップストア「RIMOWA Store 銀座7丁目」の3階にあるスペースを使用し、アートエキシビション『RIMOWA Heritage Ginza』を6月14日(金)より開催する。
会場では、RIMOWAが保有するヘリテージ コレクションの中から約30点のスーツケースを一堂に集め、ブランドの歴史をスーツケースと共に辿ります。また、本スペースのオープンを記念した企画展として、「HIDDEN CHAMPION(ヒドゥン・チャンピオン) 」キュレーションのもと、RIMOWAのスーツケースを素材とする “旅”をテーマにしたアート作品の展示が実現しました。歴史的なアーカイブと現代アーティストによるアートエキシビションを掛け合わせることにより、RIMOWAの過去から続く“今”を表現しています。
ここでは、「RIMOWA Heritage Ginza Special Exhibition」にて作品を手掛けてくれたアーティスト、USUGROW、Colliuの2名のインタビューをお届けします。
平面的な立体作品などを用い、新鮮さと懐かしさが同居するかのように時空を止めるColliuと、国境を越える旅のように、独自のスタイルのカリグラフィーによって言葉の壁を越えて表現するUSUGROWという、全く異なる世界観を持つ2名のアーティスト。人生を彩る“旅”をテーマとした彼らのアート作品を、ぜひとも会場まで足を運び、ご覧ください。
Text & Edit:Ryosei Homma
Colliu
——絵を描き始めたキッカケを教えてください。
もともと小さい頃からお絵描きみたいなものは好きだったんですけど、真剣に絵を描こうと決意したのは美大への受験を決めた後なんです。横浜が地元で、当時は桜木町の高架下に多くのグラフィティがあり、初めて生で見る作品の迫力が自分にはすごく刺激になりました。そんな自分なりに見たグラフィティの解釈が、今の私の作品への影響になっていると思います。
——平面的に絵を描く作風や、その平面的なまま立体作品を制作する作風は、どういう流れで行き着いたのですか?
この作風自体、グラフィティの影響が強いと思っています。いろんなグラフィティを見ているうちにそれぞれわかりやすいスタイルがあって、名前が描かれていようとなかろうと、“この人の絵だ”っていうことがわかる“トレードマーク”のようなものを拡散していくのがグラフィティの面白いところなんじゃないかと思っていて。グラフィティと一言でいっても多種多様なスタイルがあり、私は視覚的に文字よりもイメージを拡散する方が面白いという考えなんです。その上で自分のトレードマークを作りたいと思ったときに、人間が描かれていると、多くの人の目を引くんではないかと思ったんです。自分と似た対象として。そこで、人間を簡略化したり、人間のアイデンティティ−を司っている目の部分の造形にオリジナリティを加えることで、キャラクターとして個性のあるものが出来ると思いました。それらを意図して、目が特徴的なキャラクターができたんです。基本的には自分のトレードマークというものがあれば、ある程度タッチが変わってもそれがColliuの作品だとわかってもらえる。割と戦略的思考というか、そういうものありきでこれを作り出したという感じはありますね。実際にいろいろな場所や素材でフレキシブルに対応できているから今のところ成功していると思っています。
——今回の作品のテーマやコンセプトについて教えてください。
スーツケースをオリジナルにカスタムするとなると、一般的にはステッカーをペタペタ貼って個人差をつけるというイメージがあって、そんな感覚でオブジェクトが壁にペタペタあるような展示ができたら面白いんじゃないかと思いました。そのコンセプトをもとに、大小さまざまなサイズのオブジェクトを壁面に散らして構成するように組み立てていきました。スーツケースの方は、正面から見たときに一枚の絵のようになっていたら、空港のベルトコンベアから出てきたときに変で面白いかもと思って制作しました。旅行をしているイメージというよりも、旅行先の空間にそのスーツケースがあったら違和感があるかもという面白さを意識しています。
——スーツケースに作品を施す時に苦戦したことなどはありますか。
作品を構成していく上で、自分のなかにある完成イメージと実際のものとでズレが発生したり、技術的にやりたいことができなかったりすることも多くあります。しかし今回は、今までの経験を踏まえ、想像と完成のイメージの間にズレがさほどなくて、満足のいく仕上がりになりました。
——RIMOWAのブランドイメージについて教えてください。
とにかくやはり丈夫なスーツケースというイメージですね。見た目はシンプルですが、アルミの質感は街中で利用している人を見かけても一目でRIMOWAだとわかる印象があります。シンプルだからこそ、自分でカスタムしようと思ったらどんどんカスタムしていけるような余白も多く、楽しみながら制作できました。
——では最後に、旅は好きですか?
香港に住んでいた経験もありますが、単純に海外旅行は大好きなので、今年はもうすでに2回海外に行っています。フランスのパリに2週間と、モデルの仕事で台湾に行ったりと、結構スーツケースを使う機会は多いですね。
USUGROW
——絵を描き始めたキッカケを教えてください。
もともとハードコアパンクなどの音楽が好きで、ライブのフライヤーを描き出したのが最初です。そういうことを始めていくうちに、CDやレコードのジャケット、Tシャツのグラフィックを依頼されて描くようになり、それが生活の中心になりました。今はギャラリーで個展をやったり壁画を描くようにもなりました。
——点描画以外にもアルファベッドを崩したような書体のカリグラフィーで知られていますが、どのようにして現在のスタイルが生まれたのでしょうか。
そもそも文字が好きで、お寺でよく見る仏教の梵字や、漢字、グラフィックデザインなど書体全般に興味がありました。グラフィティも好きで、グラフィティは自分の好きな文字を追求し、書き残すというその全てが好きだったので、自分だけのスタイルの文字が欲しいというところからカリグラフィーを始めました。自分の書体をコスモポリタン(世界主義者)と呼んでて、漢字やアラビックやいろんな要素が入ってるんですが英語のアルファベットになってます。世界でそれぞれの文字、言語やアクセントがありながらも、皆歩み寄って英語で話しているイメージ。
——今回の作品のテーマやコンセプトを教えてください。
今回は僕のテーマの一つである“Spirit Beyond Borders”(精神は国境を超える)という言葉がRIMOWAの提案する旅に重なると思ったので、今回はそのフレーズをスーツケースに描きました。背景の布にはその象徴として、ダンス、フラメンコを描いています。フラメンコもスペインで突然完成されたものではなくルーツがあるんです。ダンスや文字もそうですが、芸術は土地から土地へ旅をしているんだと思うんです。そしてそれぞれの土地の特色を加えながら成熟して文化になる。歴史の中で弾圧があったり、史実から抹消されても、残された作品は歴史を語っています。それこそが“Spirit Beyond Borders”であり、それは時代の有力者が書き残した史実よりも真理なのでは、と思ってます。今は他人や他文化への理解不足が多くの誤解とトラブルを生んでいると思ってるので、この言葉は閉塞感のある今の世の中に必要なことだと思っています。言葉にすると少し壮大な気がするんですが、“Borders”は国境という意味だけではなく人間関係やあらゆるものの境も含んでます。本人次第でその境を越えることができるという意味です。
——スーツケースに作品を施す時に苦戦したことなどはありますか。
仕上げにクリアを吹いたりしてせっかくのアルミやポリカーボネートの素材の美しさを壊すのはもったいないと思ったので、看板を描いたりするときに使うエナメル塗料を使い、スーツケースの素材感と塗料の質感の違和感を敢えて残すようにしました。何も施さなくても“すっぴん”が綺麗と思えるほどに素材がいいので、お化粧はほどほどに、というイメージでしょうか(笑)。自分の作品は、場所を全部塗りつぶすのではなく、その場にあるものとなるべく調和し、なおかつメッセージもきちんと残すというやり方なのですが、それが今回はうまくできたと思います。
——RIMOWAのブランドイメージについて教えてください。
質実剛剣で無駄がなく、それでいて繊細さや品の良さ。今回の作品でもそういったものを殺さないようにしたいと思って制作しました。
——以前は毎年のようにアメリカに長期滞在していらっしゃったようですが、旅はお好きですか?
正直に言うと、家で寝ていたい派なんです(笑)。今は年に2、3回渡航がありますが、そんな自分でも旅をすると楽しいと思えるような経験ができますよね。日常生活はいろいろなものに追われているので、飛行機に乗っている時が1番リラックスできますね。誰からも連絡がないので(笑)。こんなに腰が重くて出不精な自分でも旅に行くとリラックスできて新しい発見があったりするので、本当に面倒臭がりなあなたも、ちょっと旅に出てみるといいと思います。
アーティストプロフィール
Colliu | コリュ
アーティストでありモデルとしても活動。武蔵野美術大学造形学部油絵学科卒業。目が特徴的な人型のモチーフを中心に、ドローイングや絵画、立体作品など、様々な手法で独自の世界を表現している。空間に対するアプローチに定評があり、作品単体のみならず展示された空間全体を操るかのように空気を変化させる。
colliu.com
USUGROW | 薄黒
90年代初頭よりパンク、ハードコア等のアンダーグラウンドミュージックシーンでフライヤー制作からアーティスト活動を始める。2005年より活動の場をアートギャラリーにも広げ、国内外で個展を開催。女性、華、スカルなどを白黒の点描で繊細に表現すると同時に、独自の文字を用い大胆に描かれるカリグラフィーが唯一無二の世界を作り上げている。
usugrow.com
展示情報
タイトル:RIMOWA Heritage Ginza
会期 : 2019.6.14(金)〜
場所:RIMOWA Store 銀座7丁目
住所:東京都中央区銀座7-9-17, 3階
営業時間:11:00~20:00
RIMOWA(リモワ)
リモワは、高性能なプレミアム ラゲージで世界をリードするブランドとして広く知られています。1898年の創業以来、高い品質と革新性に富んだ製品づくりを真髄とし、1937年にはアルミニウムを、2000年にはポリカーボネイトをスーツケースの素材として取り入れました。製品の開発から熟練工による精巧を極めた製品づくりのほとんどを、創業地であるドイツ、ケルンで行っています。2017年1月LVMHグループの一員となりました。
rimowa.com