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Paola Delfin

巨大な壁画を描くメキシコ人アーティスト、代官山で個展を開催。

空白の巨大な壁に命を吹き込むビジュアルアーティスト、「Paola Delfin(パオラ・デルフィン)」。遡ること100年前、メキシコ革命の意義やアイデンティティーを巨大な壁を媒体にアートで表現することで誰もが平等に観覧でき、そのメッセージを多くの民衆が共有することを目的としたメキシコ壁画運動は世界の美術史に多大な影響を及ぼした。そのスピリットは時代を超え、数多くのアーティストによって成長させられ続けている。最もその運動が起こったメキシコシティで活動するアーテストの1人であるパオラの作品は、自身の性である女性をモチーフに美しさや儚さ、脆さの中にある女性本来の強さを連想させる。そんな彼女の日本で初めての個展が〈junkinoko gallary〉で行われるとの情報を耳にしたので、足を運びインタビューを行なった。

Photo: Nariaki Matsuura (nalice_malice)
Text & Edit: Ryosei Homma

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——あなたのアートワークをよく知らない人に簡単に自己紹介をお願いします。

名前はPaola Delfin(パオラ・デルフィン)。メキシコ出身で主に大きな壁画を描くストリートペインター、ビジュアルアーティストとして知られているの。ホームタウンのメキシコシティーは東京と同じぐらい都会で忙しい街だけど、メキシコ壁画運動が起こった場所として美術的にも数多くの歴史が残る素晴らしい場所なのよ。

——日本で初めての個展を開くことになった経緯について教えてください。

単純に日本が好きで今回は旅行も兼ねて来日を決めたわ。実は2017年に大きな壁画を書かせてもらうために日本に初めてやってきたの。その時は壁画を書きに来ただけだったから4日ぐらいしか滞在できなくて。その時も今回個展を行なった〈jinkinoko gallery〉のボスが色々と面倒を見てくれていたの。壁を提供してもらったりね。その縁あって今回は壁画家にはちょっと珍しい小さな作品を展示する個展を日本で開催しようってことになったの。

——今回の個展“ARCANUM”のテーマを聞かせてください。

個展のタイトルである“ARCANUM”は、スペイン語ではミステリーや神秘っていう隠された意味が込められているわ。普段は巨大な壁に絵を描くんだけど、スタジオで1年ぐらいかけて描き溜めていたものを展示しようっていうことになって。これは、主に1年で私が経験したストーリーをまとめた作品なの。様々な体験や経験をしたその時々で絵に描きとめていたのよ。

——幼少期から壁に絵を描いていたんでしょうか。

小さい時から絵を描くのが大好きで、ずっと絵を描きながら育ったの。その頃書いていたのは私が想像で作り上げたおかしな世界だったり、気持ち悪いキャラクターであったり。その頃は、将来は壁画家になっているなんて夢にも思っていなかったわ。実際にプロを目指して絵を仕事にするようになったのは18歳の頃かしら。壁画にはずっと興味を持っていたんだけど、そっちをメインに活動するようになったのは23歳の時ぐらいからなの。

——それでは、初めて描いた壁画について教えてください。

壁画を初めて描いた場所は故郷のメキシコシティにあるおもちゃ博物館の屋上。そこはとっても面白い場所で、館長が日本人で日本のレトロなおもちゃがたくさん展示されている場所よ。そこでは壊れたおもちゃの人形を描いたの。ストリートアートに関心のある館長がオファーしてくれて。それをきっかけに壁画にのめり込んで行くようになって。だから日本人は私のターニングポイントで重要なポジションを占めているの(笑)。

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——1920年代にメキシコ壁画運動があり、今日のアートにおいても大きな影響を与えています。あなたはその時代背景に対してどういった考えをお持ちですか。

私は過去のメキシコのアーティストたちが行なった歴史的な壁画運動をすごく誇りに思っているわ。アートを通して強力なメッセージを民衆に伝え、多くの人がその考えを共有し伝えていくというアイディアは現在の私の活動のルーツであり、過去のアーティスト達を本当にリスペクトしているの。現在のアーティストは異なる時代で生まれ育っているから、もちろんそのアートワークに込められた想いは必ずしも同じとは限らないんだけど。でも、先人達が私たちに残してくれた芸術的な時代背景、現象を常に心の片隅に置いて絵を描いているわ。

——あなたの作品の多くはモチーフに女性が使われ、女性の地位や美しさを表しているように見受けられますね。

幼少期の頃は人以外のものをよく選んで描いていたの。植物であったり、陶器やブリキなどの素材で出来たものであったり。それらを女性の体とミックスして壁画に描くようになっていって、今では世界各国で壁画を描くことができるようになったの。壁画にその瞬間感じていることを落とし込み、その土地に合わせた大きなメッセージ性を持たせるように私自身も進化したわ。旅先の歴史や情勢に耳を傾けて、市民の人々がなるべく多く目にするであろう壁をキャンバスにする事で、そこに住んでいる人たちが様々な印象をもってくれて少しでも考えや生活が豊かになることを願って描いているの。

——主に女性の社会地位などのメッセージを込めたあなたの作品は、今日のメキシコ美術史において重要な役割を果たしていると個人的に思います。

ハハ、そう思ってくれてありがとう!果たしてそうなのかはわからないけれど、絵を描く事を単純に愛していてこれからも末長く続けられることを本当に願っているの。私はよく人間の性質に感化されていて、自身の性である女性の顔や体をモチーフにする事でメッセージをより簡単に目を通した人に理解してもらえると思うんだけど、そこに女性の異なる側面を織り込んで見た人の想像力を駆り立てることも私のアートワークには重要だと思っているわ。女性は男性より弱い立場に見られると身をもって経験しているけど、私は完全に性差別が無い平等の立場という考えなの。だから、私の内なる世界やビジョンを壁に描きそのメッセージを多くの人に共有してもらう事こそが最大の面白みであり、それによって私自身も進化していくの。だから、自分自身の進化の為にも街中をプレイグラウンドに選んでいるのよ。

——絵を描くこと以外に興味があることを教えてください。

音楽はよく聞いているわ。何か描いている時もよく音楽を聴いてモチベーションを上げているの。あとは本が好きで、時間があったらよく読書をしているわね。どちらかというと読書のためにもっと時間を作りたいわ。

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——この後のプランや次のプロジェクトについて教えてください。

次はアメリカの壁画フェスティバルへ行って大きな壁画を描くプロジェクトがあるの。その次はルーマニアへ行って壁画を描くわ。そして年内中にヨーロッパへ行く計画を立てているの。個人的な目標はもちろんこれからも絵を描き続けてもっとスキルを磨いていきたいと思っているわ。友達が働いている巨大な施設の壁に絵を書いたり、見てくれた人がフィードバックをくれたりそんな良さが壁画にはあるから。スタジオでこもって制作するのはあんまり性に合わないから、外の空気を感じながら制作できるのも魅力的なの。でも、もちろんスタジオでのキャンパスへの制作も続けて行くわ。親友のアーティストとも共同で作品を制作したいと考えているの。ボーイフレンドも絵を描いているんだけど、彼ともいつか一緒に何かをやろうって話をしているのよ(笑)。

——最後にアーティストを目指す若者にメッセージをください。

単純に重要なことは愛していることを全力でやるべきよ。そして自分の信念を持って制作に取り組むの。若いうちは怖がらず、何でも果敢に挑戦したほうがいいわ。もしアーティストになれなくたって、会社員をやりながら好きなことを続けていくのもなんにも恥ずべき事では無いから。愛を持って取り組めば何でもきっとうまく行くわ。

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