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Otis Hope Carey

アボリジニのDNAを受け継いだ、孤高のサーフ戦士。

「Otis Hope Carey(オーティス・ホープ・キャリー)」というアボリジニの血を引くプロサーファーをご存知だろうか。多くの人はサーフィンと聞いて、大きなボードに立ち波に乗る姿を想像するであろう。しかし、彼のスケートライクなそのスタイルは見た者に波に乗る時間より空中にいる方が長いと感じさせてしまう程に特異なものである。荒くれた波をハイスピードで駆け抜け、立て続けに披露されるアグレッシブなエアリアルは正にアボリジニの戦士の姿を彷彿とさせるであろう。また、オーティスはペインターとしての顔もありアボリジニ伝統の技法を用いて作品を制作している。今回、『GREEN ROOM FESTIVAL』の〈BILLABONG〉ブースにて作品の展示とライブペイントを行うために来日したオーティスに話を聞くべく、彼のもとに足を運んだ。
 
Text: Ryosei Homma

 

『Otis Carey: Welcome to Coffs Harbour』 – BILLABONG

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―それでは、自己紹介をお願いします。

名前は「Otis Hope Carey(オーティス・ホープ・キャリー)」。現在30歳で、オーストラリアの東海岸にあるCoffs Harbourっていう小さな港街の出身なんだ。家系がアボリジニのGumbaynggir族で、幼い頃からその民族の風習に影響を受けて育ったんだ。海を心から愛するサーファーなんだけど、絵も描いていて個展を開催したりしているよ。それと何よりもビールが大好きなんだ。

―今回来日するようになった経緯を教えて下さい。

サポートされている〈BILLABONG〉から、 『Green Room Festival』で俺のアートワークを展示しないかっていうオファーを受けたんだ。それに加えて会場でライブペイントも同時にやろうっていうことになって来日することになった。今回が初めての来日なんだけど、日本は本当に最高だね。24時間どこでもビールが買えるし。もうすでに大好きな場所の一つになったよ。特にこの来日中に湘南でサーフィンをやる機会があったんだ。そこは特別な場所で、強いローカリズムが色濃く残る日本のサーフ界における歴史的な場所なんだ。そこで波に乗れたことは俺にとって本当に光栄なこと。そのお礼を込めてそこにあった岩にペイントしてきたんだ。そのあとは、みんなとワイワイ盛り上がってたら飲みすぎちゃってさ。だから今日も遅刻しちゃったんだよ(笑)。

―サーフィンを始めた頃についてお聞かせください。

そのころの記憶はないんだけど、2歳の時に親父が初めて海に俺を入れたって言っていたんだ。そして、3歳の時から板の上に乗って遊んでたらしい。最初は両親に連れて行かれてサーフィンをやっていたんだけど、気がついたら生活習慣のひとつになっていたよ。俺の民族の象徴、トーテムは水で海に引き寄せられる運命にあったんだ。だから俺にとってサーフィンは、本当にやるべくしてやっていることなんだって子供ながらに感じていたんだ。

―子供の頃からプロを目指していたんでしょうか?

実はそんなこともないんだ。子供の頃はプロサーファーとして飯が食えるなんて夢にも思っていなかったんだよ。本当にありえないことだと思うんだけど、今の俺にはサポートしてくれるブランドがいて生活できている。スポンサーには本当に心から感謝しているよ。

―エアリアルを得意とする特徴的なスタイルですが、大会でタイトルを獲った経験は?

実は、大会っていうのはあまり好きでは無いんだ。ターンが得意では無いからね(笑)。だから大会を目指してサーフィンをするんではなく、心から楽しむために自由気ままにやっているよ。大会のデモなどではよくサーフィンをやっているんだけどね。でも、肩書きとしてはアボリジニのプロサーファーとして大きな大会で2回優勝したことがあるんだ。

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―絵を書き出したのも幼少期の頃からなんでしょうか?

実は4、5年ぐらい前に絵を描き始めたから、こっちはまだ素人なんだ。19歳ぐらいの時に都会の暮らしに憧れてコフスからシドニーへ引っ越したんだよ。その時に世界中のサーファーやストリートアーティストなど多くの人に出会ってアートにも興味を持つようになったんだ。

―絵を描くときのインスピレーションはどうやって湧くのでしょう。

アボリジニの文化を身をもって体験し成長したから、先住民族が描いてる模様をよく見ていたんだ。多くのドットの集合で食用の植物や水が湧く場所を壁や地面に描く点描画や、動物の食べられる部位や骨がある部位を伝達するために書かれたレントゲン画であったりね。アボリジニには文字がなかったから模様を描くことがコミュニケーションのひとつの方法だったんだよ。今回ライブペイントで書いているいくつもの円は水源を表しているんだ。主にサーフで見た景色や海への感謝、愛する家族から大きな影響を受けて筆を走らせているんだ。

―多くのタトゥーがありますがそれぞれに特別な思いなどはありますか?

民族的なものはほぼ彫っていなくて、モダンなイラストを多く彫っているんだ。家族であったり、愛する海や自然であったり。あとは俺が好きな物や面白いと感じるものを彫っているんだよ。初めは腕や足に彫っていたんだけどスペースがなくなっちゃったから今は胸に彫っているんだ。

―人生の教訓やモットーはありますか?

付き合う仲間はよく考えているよ。それから、好きなことはとことん突き詰める事、愛するものは一生その愛を貫く事かな。

―これからやりたい事やプランは?

死ぬまでもっともっと世界中の愛する海でサーフィンをやりたいよ。そして、より多くの経験を積んで人生を楽しみたい。アートに関しては彫刻に今すごく興味があるんだ。だから、そのうち木彫りに挑戦したいと思っているよ。

―木彫りのサーフボードを作るために?

いいや(笑)、いつだってアート制作をやるときはテーマなんて何も考えずに直感でペイントするんだ。その場で感じていることをそのまま表現することが俺のアートに対する理念なんだ。

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