世界各地で多くのミューラルアートを手がけ、エキシビションを開催しているロンドン生まれのストリートアーティストD*Faceが日本では7年振りとなるエキシビション『Social DIScontent’by D*Face(社会的不満)』を、10月8日(火)〜11月4日(月)西武渋谷店A館7階=特設会場にて開催。
新しいアートワークに加え、未公開作品やアーカイブのプリント作品が展示されるほか、過去10年間の経歴を振り返る企画展示も特設され、様々なインスタレーション展示がされていた。
今回の来日のきっかけとなったD*faceとXLARGEのコラボレーションコレクションも見逃せないのでぜひチェックしていただきたい。
本企画は日本でのミューラル制作や展示にフォーカスを当て、撮影班が密着した活動レポート。
Text: Yuta Sasaki
『XLARGE×D*Face RECAP MOVIE by HIDDEN CHAMPION』
D*faceが西武渋谷店のミューラル(壁画)制作に着手したのは、まだ人通りが多い10月9日(水)の23:00頃だった。巨大な高所作業車がセンター街の歩道に乗り上げる。大量のスプレーや塗料、ブラシなどを抱え、準備を整えたD*faceと2名のアシスタント、そして我々撮影班も乗り込んだ。
多くの関係者に見守られながら、あれよあれよと最上階部分まで上がっていった。普段自分が通っているセンター街と違い、渋谷という街を俯瞰に見れる機会はそうそうない。なかなか新鮮な景色が目に飛び込んできた。
この時、作業デッキの外にカメラを出して撮影をしていたところ、一眼レフに取り付けていたストロボを地上に落下させ、大破させてしまったことをこの場を借りて会社に謝りたい。
外壁のペイント部分を白のペンキで下処理していき、日本で言うところの墨出し的作業が始まった。小さな穴を開けた紙の上から黒板消しに黒い粉の入ったような用具でパンパンと叩いていく。そうすることによって自分の背丈の何十倍ものサイズのアートワークを描くためのガイドラインが完成する。段取り八分とはよく言ったもので、巨大なミューラルアート制作の謎が少し解明された気がした。
アシスタントとして共に作業していたスティーブのマスキングテープ捌きには目を見張るものがあった。円形だろうが鋭角なラインだろうがなんでもかかってこいと言わんばかりのスキルを見せつけられた。
この日は上部2体程を描き上げて終了。朝6時過ぎ、空腹の我々はラーメンを食べにセンター街のかむくらへと向かった。お疲れ様のビールを乾杯したのち、D*faceがラーメンにラー油を大量にかけて食べていたのが印象的だった。
2回目のアタックは10月11日、関東全域を襲った台風19号“ハギビス”の影響で雨足が強くなりつつもペイントをスタートさせたものの、25時頃には大事をとって作業を中止となった。D*face御一行は恐らく飲みにいったと思われる。
天候も良くなった10月13日〜14日にかけて、台風で失ったロスを取り返すかのようなスピードで作業を進めていったD*face達。アシスタントとの抜群のコンビネーションはグルーヴさえ感じたほどだった。
間近で見ても美しいラインと正確なペイントは流石の一言。最後に今回来日のきっかけとなった〈XLARGE〉へのメッセージを添えて完成となった。
現場付近には見物人が数多く集まっており、地上へ降りてきたD*faceに、サインを求めに駆けつけたファンに親切に対応していた。まるで惑星探査から帰ってきた宇宙飛行士のようだった。
最後にペイントを見守っていたオーディエンス達と会話を楽しんだ後ホテルへと帰っていった。
ストリートカルチャーが根付く渋谷という街の一角にD*faceが描いたミューラルアート、これは第1章に過ぎないのかもしれない。