HIDDEN CHAMPION HIDDEN CHAMPION

Stephen Palladino

等高線で表現する、一線を画す独創的なペインター

THUMPERS NYC & STP for JOURNAL STANDARD

ニューヨークのアート、ミュージック、スケートボード、スニーカーなどのストリートカルチャーを牽引してきた『ALIFE』でデザインディレクターを勤めていたJesse Villanueva(ジェシー・ビヤヌエバ)と、その弟でバイクのカスタムビルダーをやっているMisia Villanueva(ミーシャ・ビヤヌエバ)が、ニューヨークをベースに立ち上げたアパレルブランド〈Thumpers(サンパース)〉。同じくニューヨークで生まれ、自身のオリジナルティを追求し活動を続けるペインターStephen Palladino(ステファン・パラディーノ)。今回、Thumpersのポップアップが渋谷のジャーナルスタンダード神南坂で行われ、そこでライブペイントを行うために来日したスティーブン。ライブペイント中に会場のお客さんをピックアップして描くモデルにしたり、似顔絵をプレゼントするなど大盤振る舞いで、大盛り上がりだった会場の写真と共にインタビューを掲載する。

Text: Ryosei Homma

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―今回はどうして来日したの?

ThumpersとJOURNAL STANDARDがコラボレーションアイテムをリリースしたんだけど、そこでオレが提供したアートワークを採用してくれてトリプルコラボが実現したんだ。今回はそのポップアップスタートにちなんでライブペイントをやらないかってことで来日したよ。

―では、自己紹介をお願いします。

名前はStephen Palladino(ステファン・パラディーノ)。ニューヨークのブロンクスで生まれて、幼少期は親が離婚したり、いわゆる家庭の事情ってやつでニューヨークを転々として育ったんだ。子供の頃から“絵を描ける子供”だったから好きでよく色々描いていたんだけど、それを見ていた親父にアートスクールに通わされることになったんだ。親父はタトゥーカルチャーとかクラシックカーが大好きでさ。Rat FinkやMAD MAGAZINEとかをよく見せてくれていたんだけど、多分息子にアートで飯を食って欲しかったんだと思う。でもまだ小学生だぜ? そんなガキがアート大好きだって言いながら絵を描いてるのってちょっと可笑しいじゃん? 好きだからやってるだけであって、絵を描くって事はオレにとって日常だったのに、アートスクールに通うハメになったんだ。結局高校までアートスクールに通って、途中でドロップアウトしたよ。

―そうなんですね。ではその頃からアートを続けているっていう訳だ?

アートスクールへ通う前から、ずっと何かしら絵を描いていたんだ。それで、アートスクールへ通い出しても1日中デッサンさせられて退屈でさ。もちろん模写なんかはそれなりに上手く描けたけどそんなのハナっから興味なんて無かった。5年生ぐらいの時に水平曲線を授業で習ったんだ。そこで得た知識はオレの今までのアートワークに大きな影響を与えているよ。水平曲線を使って、抽象的にカートゥーンのキャラクターとかグラフィティのレターなんかを描くようになっていったんだ。初めて壁に大きな絵を描いたのは14歳の時。その時は完成までにとにかく時間がかかった。Googleなんて当時はなかったし、オレは図書館に行ってどうやったら壁に巨大な絵を描くことができるのか必死に勉強したんだ(笑)。親父もいいアドバイスをくれて、なんとか描き上げることができたよ。高校の時に両親が離婚したタイミングでオレも勝手に学校を辞めて、親父の実家に引っ越して同じ工事現場で働き出した。アートスクールを勝手に辞めたことに対してはカンカンだったんだけど、親父は仕事も紹介してくれたし、何より親父の家のガレージは広くて大きな絵も制作しやすかったんだ。

―本当に良いお父さんに恵まれたね。

うーん、そうだね。尊敬はしていたよ。親父は、自分でDIYできるものはなんでも作るっていう主義でオレは欲しいものをリクエストしても断られるか、親父が作ったものを与えられていたよ。スケートボードとかね(笑)。親父は建築工事の仕事をしていたんだけど、取り壊しのビルや廃材置き場からアンテークの家具なんかをよく拾ってきてはリペアして部屋を飾っていた。それにもオレはいい影響を受けたんだ。
そんな親父はオレにブロンクスのグラフィティを見せに連れて行ってくれたことがあってさ。その時初めてTats Cruのグラフィティを見て感動し、壁に巨大な絵を描きたいって原動力を持つ1つの要因になったよ。そこからただタグを描くんではなくて自身を表現する何かを描きたいって考えるようになった。オレにとって一番クールなアートはグラフィティだけなんだ。コミックや絵が上手く描けるのは単にすごいけどただそれだけで惹かれない。グラフィティだけが唯一かっこいいアートだと思うよ。

―それでは、いつからアートで生計を立てるようになったの?

オレが21ぐらいで初めてのアートショーをやった時に親父が病に倒れて、しばらくして死んでしまったんだ。遺産なんてこれっぽっちも無かったもんだから、無一文になっちゃってさ。でも、親父が死んだことで考えがクリアになって、自分のアートで金を稼ぐしかないんだってわかったんだ。そっからは精力的に自分のアートだけで仕事をするようになったよ。

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―Thumpersとはどんな関係?

オレのガールフレンドがThumpersのジェシーの妹と友達で、その妹に紹介されて会う機会があったんだ。お互いに何をしているか知ってはいたんだけど、その時初めて話をしてどっちも似たビジョンやプランを持っていて性格が合った。今じゃ靴やセーターなんかを交換する仲にまで発展してるよ(笑)。ジェシーは年上なんだけど、マジでイカした兄貴分みたいな感じでさ。2年前、オレが初めて日本に向かっている時にちょうどジェシーから「なんか一緒にやろうぜ」って連絡が来て、ふたつ返事でOKしてコラボレーションすることが決まって。その時ジェシーが日本の友達を紹介してくれて、今回アテンドしてくれているみんなとも仲良くなったんだ。

―今回のコレクションのテーマは?

まず1つはオレのイニシャルである“STP”アイテム。昔あったオイルカンパニー〈STP〉のロゴをサンプリングしたんだ。もう1つはオレンジをベースにしたキャラクターを描いて総柄のシャツやTシャツを作ったよ。

―今日もSTPのアイテムを着込んでいるね。

STPはオレのイニシャルであり、親父もまた同じイニシャル。親父がSTPのタトゥーを彫るぐらいのSTPグッズのコレクターで、今身につけているものは親父が収集したものの形見なんだ。オレはそのロゴをサンプリングして、自分のアートワークにも取り入れているんだ。

―影響を受けたアーティストは?

そんなの多すぎて答えられないよ(笑)。ざっと100人以上いるんだ、1人には限定できない。アートの長い歴史の中で、いろんな作品がサンプリングされ形を変えて今でも昔のものが生きていたりするだろ? オレのスタイルもそんなもんで、イラストレーター、アニメーター、漫画家、デザイナー、画家、それぞれをミックスして今のスタイルが生まれているんだ。だから、1人に断定するのは非常に難しいよ。

―これからやりたい事やプランは何かある?

このエキシビションは台湾でもあるんだ。そこでもライブペイントをやるよ。これからのビジョンに関して言えば、もっと自分のスキルを磨きたいし最高の制作スタジオも作りたい。アートショーも今より遥かにレベルの高いものにしたいんだ。真面目にアートをやるって決めてから日々精進していて、最近になってやっと毎年進化しているなって感じれるようになってきたんだ。自分の腕を磨くには自分で精進するしか他に道はないだろ? 誰も力になんてなれやしないんだ。だからもっと成長できるように楽しみながら絵を描きつづけるよ。

―アーティストを目指す若者へアドバイスをください。

いつでもクリエイティブに。自分を否定せずに誠実に受け止め、自分自身をしっかりと貫き通すこと。誰かのスタイルを真似するんじゃなくて、自分が何を表現したいのか、何がいいのか、何のためにやるのかをしっかりと考えて自分のオリジナリティを見出すべきだよ。これは、オレがやってきたことなんだ。でも、ストイックにやりすぎたってイケてないから程々に楽しみながら好きなことを続けて行って欲しい。幸いにもオレには良き指導者がいて、彼は死ぬまで“Stop being a pussy and do it even if its wrong!”て言い聞かせてくれたんだ。これはオレの人生の教訓にもなっている。だから、ビビってないでなんでもやってみることが一番大切だよ。

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