Manhattan Portage ART AWARD 2022
Manhattan Portageによるデザイン公募企画 “アート・アワード”第9弾のグランプリが決定!!
〈Manhattan Portage〉によるデザイン公募企画 “アート・アワード”第9弾のグランプリが決定!!
Manhattan Portageが主催するデザイン・コンペティション「ART AWARD 2022」のファイナリストとグランプリが先日公表された。「PEACE」をテーマに、全国のクリエイターから集まった応募数は200以上にも達し、どれもユニークなアイデアに溢れる甲乙つけがたい作品になっていた。
今回はファイナリストに残った6名と、さらにその中からグランプリに選ばれたKan Kobayashiさんの作品をインタビューと共に紹介したい。グランプリとなった作品は2022年の秋冬シーズンにManhattan Portageの「Canvas Art Print Collection」として発売されるということなので、そちらも楽しみに待っていて欲しい。
――今回の「ART AWARD」でのグランプリ、おめでとうございます。まず簡単な経歴や絵を描き始めた経緯などを教えてもらえますか。
Kan Kobayashi(以下、KK) 東京出身の23歳です。絵を描き始めたのは本当にありきたりですけど、幼ない頃から気が付いたら描いていたという感じです。将来の仕事を考え始めたときに、絵やデザインの方向しかイメージが湧かなかったので、高校生の頃から美術予備校に通いはじめて東京藝術大学に入り、一年ほど前に卒業しました。
――藝大卒なんですね。どのような勉強をしていたのですか?
KK デザイン科だったのですが、専攻などは無くて「自由に好き勝手にやれ」という感じでした。一ヶ月に一個くらい課題がでてそれをクリアしていくんですが、その課題自体ものすごく抽象的で、例えば「時」をテーマに作品を作りなさい、とかそういう感じなんです。手法はなんでも良いし、どうとでも捉えられるようなお題です。なので、毎回新しい技法に挑戦する人もいれば、4年間ずっと特定のジャンルでやり続ける人もいました。僕はやりたいことが明確に決まっていたわけではないので、絵を描いたり、家具を作ってみたり、版画をやってみたりといろんな事をやっていました。
左.「あいち国際女性映画祭2020」のポスター。こちらもコンペで採用された秀作。 右.大学の友人たちの演奏会「オペラ・ガラコンサート」用に描いたポスター。
――制約が無い分、課題に対して自分なりのコンセプトを考えることが重要になってきますね。
KK そうですね。技術的なことは聞かないと教えてくれないので、考え方とか、モノづくりに向き合う姿勢みたいなことを学んだ4年間でした。
――今回受賞した作品では、Manhattan Portageのロゴを多様な人々のシルエットで表現していてコンセプト作りが上手いなと思いました。そういう部分はやはり藝大で課題をクリアしていくにつれて身についたものだと思いますか?
KK 大学もそうですが、もっと言うと美術予備校の頃からですね。藝大のデザイン科は「観察すること」に重きを置いているんです。観察といっても目の前にある「モノ」をリアルに描くということもそうですし、そのモノの「本質」を読み取るということも観察、さらにその「背景」になにがあるかを知るということも観察です。僕は観察することが好きなので、こういうコンペでもお題の本質や、Manhattan Portageというブランドの背景や空気感を観察することから始めました。
手にフォーカスしたという卒業制作作品。東京メトロ日比谷線 銀座駅コンコース「メトロ銀座ギャラリー」にて1ヶ月間展示された。
――何が求められているのかを読み解くことも重要ですが、もちろん絵やデザインの力も必要になります。今回のデザインを制作した過程を教えてください。
KK 「PEACE」というテーマを考えたときに、やはり単純ですが、世界中の人が仲良くなることだなと素直に思いました。そしてManhattan Portageはバッグのブランドなので、いろんな人にとっての、いろんなバッグってどういうものだろうと考え、浅草に「世界のカバン博物館」という所があるんですが、応募を決めた翌日にそこへ行き、いろんなカバンの種類を見ることから始めました。初めて月に行ったアルミのアタッシュケース、マサイ族のカバン、カヤン族という首に輪っかをつけている人たちのカバン、女子高生のスクールバッグ、紳士のデッカいトランクなど。そうやっていろんなものを敷き詰めて描いていたんですが、ふとManhattan Portageのロゴってすごく印象深いものなので関連づけられそうだなと思ったんです。NYの高層ビルが乱立する感じってあの街のカオスな感じを表しているし、そこにいろいろな人種がいてそれぞれの平和があるということをなぞらえることが出来そうだなと思ってやってみました。そこでManhattan Portageの背景でもある“NYのメッセンジャー”を起点に、赤ちゃんを運ぶコウノトリ、江戸時代の飛脚、ランドセルを背負った小学生、インディアン、輪行バッグを持ったサイクリスト、サンタクロースなど、様々な人を描きロゴのシルエットを構成していきました。
――素晴らしいアイデアだと思いました。こういったコンペには良く応募するんですか?
KK 学生の頃はいろいろ出していたんですが、社会人になってからはなかなか出来てなくて久しぶりでしたね。こういうのって賞金だけを目当てにやるものでも無いし、「やりたい!」って自分のテンションが上がる内容じゃないと手が進まないんです。でも今回の企画は、Manhattan Portageも自転車カルチャーも好きなので絶対にやりたいと思いましたね。
日々描き続けている「人と自転車」というテーマの作品シリーズ。昨年には湘南の自転車ショップ「COUNTER ATTRACTION」にて初の個展を開催。
――インスタグラムを見ると、普段は自転車が登場する絵をよく描いていますよね。自分で描く絵はどういう風にテーマを決めていくんですか?
KK 壮大なテーマを毎日考えるのって難しいと思うんです。でも、「人と自転車」みたいなしばりを作ってしまえばどんどん描きたいものが湧き出てくるんです。自転車の絵を毎日書いているのは、自転車が好きということは前提としてありますが、自転車って日常でもありスポーツの道具でもあるので、人との距離感がすごくカッコ良い道具だなと思っています。ただ、自転車はあくまで道具で、その道具を通して、ちょっとした姿勢とか佇まいとかで人の性格や特徴みたいなものを表現したいとずっと思っています。この卒業制作で作った作品は“手”にフォーカスしているのですが、これも手と何かが関わったときの温かみとか、しなやかさとか。そういうものを表現したんです。
今回の受賞作を元に、Manhattan Portageからの要望により、小さめのプロダクト用に新たに描きおろした作品。
――それでは、今後やりたいことなどを教えてください。
KK まだまだ自分の作風が完成しているとは思っていないので、描きながらどんどん変化していくと思いますし、それをいろんな人と共有したり、楽しんで頂いたり、一緒にモノづくりできたら嬉しいなと思っています。僕は緻密に描き込んでいくというよりは、シンプルな図形や線だけなのに圧倒的な力を感じさせるような絵を目指しています。でもそれってめちゃくちゃ訓練しないとその領域には達せないと思っています。なので、そこに行くまではひたすら描き続けたいと思っています。
Kan Kobayashi
@kankobayashi_
グラフィック・アーティスト。1998年東京都生まれ。言葉や表情には現れない、人の佇まいやしぐさの魅力を観察し、表現する。また、暮らしにおける道具や物作りを愛し、人とモノの関係性に着目。最も美しい道具のひとつであると考える自転車を題材に、日々制作をしている。2021年、東京藝術大学卒業。
こちらが「ART AWARD 2022」の、200以上もの応募数のなかからファイナリストに残った作品群。惜しくもグランプリには選ばれなかったものの、どれも「PEACE」というテーマのもと楽しんで描かれたことが伝わってくるユーモラスな作品になっている。
有名無名を問わず、新たな才能にチャンスを与えてくれるManhattan Portage。2022年の年末頃には「ART AWARD 2023」の応募も始まるはずだ。我こそはというクリエイターは、腕を磨きながら次回の開催を楽しみにしていて欲しい。次回のファイナリストはあなたかもしれない。
KOHEI KUNIOKA
moriya
shiodrawing
Motoko Yoshida
OTOKONOKOTO
INFORMATION|Manhattan Portage https://www.manhattanportage.co.jp