本誌でも過去にインタビュー経験のある俵谷哲典に加え、早川モトヒロのダブルソロエキシビション 「DOUBLE SOLO Exhibition Motohiro Hayakawa & Tetsunori Tawaraya “PARANOID REPORT”」が8月21日(火)〜9月2日(日)の期間、東京・青山のTAMBOURIN GALLERYにて開催される。独自の世界を生きる2人のアーティストのダブル展示は必見だ。「ル・デルニエ・クリの人びと」の著者でもあるアート倉持氏による下記のテキストもチェックしてみてほしい。
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既存の流通システムに中指を立て、規制に縛られることのない自由な本作りをポリシーとし、仏・マルセイユを拠点に自費出版としては驚くべきワールドワイドな規模で出版活動を25年に渡り展開してきた「ル・デルニエ・クリ」の首領パキート・ボリノは、日本の二人の絵描き──早川モトヒロと俵谷哲典を“新世代の怪獣職人”たちと評している。
早川の作品にはいつも夥しい数の怪獣、怪人、“ヒトのようなものたち”が登場し、名もなき戦争を繰り広げている。その戦場の景色を神の視点から見つめ、ヒエログリフが如く記録するのが早川の仕事だが、新作を投入しながらもレゴのような無限の組み合わせを可能とするこのファミコン的な構図こそが彼の発明なのかもしれない。
一方、グラフィックの制作と音楽活動を並行して継続する俵谷は、やはりその表現のアウトプットの多さに驚かされる。漫画、フライヤー、レコードのカバーアート、フィギュア、スケートボード、洋服…などなど、あらゆる場所に絵を描き、自身の内面に広がるもう一つの世界を多角的に照射し、浮かび上がらせるのが彼のやり方なのだ。その世界を自由に闊歩しているであろう彼のキャラクターたちは、全身又はバストアップ或いは顔面のアップが多いので、実はそれらがタワラヤ視点によるセルフポートレート群なのではないかと僕は訝しんでいる。意外なことに日本では初の共演となる両者の、平成最後の真夏に開催されるこの二人展。共作はこのフライヤーに掲載された作品一点のみなのだそう。となれば、見どころは二人の世界が一つの空間でどのように共存、反発しあうのかという点だろうか。
タンバリン・ギャラリーで二人に会ったら聞いてみたいことがある。それは僕がいつもル・デルニエ・クリのアーティストたちを取材する際に必ずしている同じ質問だ。「あなたが描くキャラクターやモンスターたちにはそれぞれ名前があるのでしょうか?」 こんな単純な問いかけが、異界への扉を開く鍵になることを僕は知っている。(アート倉持|「ル・デルニエ・クリの人びと」著者)
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DOUBLE SOLO Exhibition “Paranoid Report”
2018年8月21日(火)〜9月2日(日)
11:00~19:00
※最終日は18時まで / 8/27(月)休廊
TAMBOURIN GALLERY
〒150-0001 東京都渋谷区神宮前2-3-24
オープニングレセプション:
2018年8/25(土)17:00~20:00